【コーヒーニュース】モカポットの象徴ビアレッティ、香港企業による買収の背景と未来とは?
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本記事は、”Why the Bialetti buyout means more than just business“(2025/1/31)の内容を参考に作成しています。
イタリアの家庭で愛され続けたこのコーヒーメーカーの代表的ブランド「ビアレッティ(Bialetti)」が、経営危機の中で香港の企業に買収されるニュースが話題になっています。
ビアレッティは、1933年に初代モカポット「モカエクスプレス」を生み出し、イタリアだけでなく世界中のコーヒー文化を象徴する存在。しかし、近年はカプセルコーヒーの人気に押され、経営が悪化していました。
ビアレッティの危機:変わる市場に追いつけなかった伝統ブランド
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ビアレッティは、かつてイタリアの家庭に欠かせない存在でした。特に1950年代以降、モカポットは「カフェの味を家庭でも楽しめる」革新的な商品として普及し、2009年にはイタリア家庭の90%で所有されていると報告されています。しかし、現代ではその人気が急速に低下しています。
その理由は、コーヒーカプセルシステムの驚異的な成長です。ネスプレッソやラバッツァといったブランドが提供するカプセル式コーヒーメーカーは、手軽さと多様なフレーバーが特徴で、特に若い世代に支持されています。一方、モカポットは「時間がかかる」「扱い方が難しい」といった印象があり、オフィスや忙しい現代人のライフスタイルには合わないとされています。
加えて、コロナ禍による店舗閉鎖や国際的な競争の激化も、ビアレッティの苦境をさらに深める要因となりました。その結果、2025年時点で同社は9,030万ユーロ(約128億円)の負債を抱え、買収を模索していました。
香港のWWICによる買収:新たなチャンス?
そんな中で救いの手を差し伸べたのが、香港を拠点とする投資会社「WWIC(World Wide Investment Company)」です。同社は、アジア市場を中心にヨーロッパの高級ブランドや文化的アイコンを買収・再生する戦略を取っており、ビアレッティもその一環として選ばれました。
WWICは、ビアレッティを世界的なプレミアムブランドとして再構築するため、以下の戦略を打ち出しています:
- 国際展開の強化:アジア市場を中心に、新たな顧客層へのアクセスを広げる。
- ECチャネルの充実:オンライン販売を強化し、現代の消費者行動に対応する。
- マーケティングの刷新:Netflixやファッションブランドとのコラボレーションを通じて、新しい世代への訴求を図る。
さらに、ドルチェ&ガッバーナとのコラボで生まれた「モカオロ」(24カラット金メッキのモカポット)は、ビアレッティがプレミアム市場に進出する意図を象徴しています。
このような戦略的な取り組みにより、ビアレッティは再び世界的に注目されるブランドになる可能性があります。
イタリアブランドと中国市場の新しい関係
ビアレッティの買収は、イタリアの伝統的ブランドと東アジア市場の新しい関係を象徴しています。
過去にもピレリ(タイヤメーカー)やフェレッティ(ヨットブランド)といったイタリア企業が中国資本の支援を受け、再生を果たした事例があります。今回のビアレッティ買収は、イタリアの「職人技」や「文化的価値」をアジア市場で活用する戦略の一環であり、中国の中間層市場をターゲットにしています。
特にコーヒー文化は中国で急速に拡大しており、大都市ではカフェやコーヒーチェーンが次々と登場しています。ラバッツァが2028年までに中国国内で1,000店舗を開設する計画を発表するなど、イタリアのコーヒーブランドにとっても大きな市場機会が広がっています。
ビアレッティの未来:伝統と革新の狭間で
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今回の買収を通じて、ビアレッティがどのように再生を果たすのか、注目が集まります。ブランドの「イタリアらしさ」を維持しながら、近代的な製品ラインやマーケティング戦略を取り入れることで、新しい世代のニーズに応える必要があります。同時に、アジア市場への進出による成長のチャンスを最大限に活用することが求められます。
一方で、伝統的なモカポットの愛好者たちからは「ブランドのアイデンティティが失われるのではないか」という懸念も聞かれます。ビアレッティがこの懸念にどのように対応し、イタリアのコーヒー文化を保ちながら進化していくのかが今後の鍵となるでしょう。
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