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世界一のコーヒー帝国「ネスレ」の研究。スタバもブルーボトルも傘下にする圧倒的戦略とは?

皆さん、こんにちは!
そしてサイトへのご訪問ありがとうございます^ ^

突然ですが、皆さんは「世界で一番コーヒーを売っている会社」をご存知でしょうか?

スターバックス?タリーズ?それともドトール?
いいえ、違います。

正解は、スイス生まれの巨大帝国「ネスレ(Nestlé)」です。

今回は「コーヒー企業研究」の第6弾として、食品業界の巨人でありながら、世界のコーヒー市場を牛耳るネスレの正体に迫ります。

実は、サードウェーブの旗手「ブルーボトルコーヒー」も、スーパーで見かける「スターバックス」の豆も、今やネスレのビジネスの一部だということをご存知でしたか?

知れば知るほど面白い、ネスレの光と影のストーリーをご紹介していきます!

ネスレ(Nestlé)とは?:コーヒー界の黒幕にして覇者

Raspberry & Passion Fruit KitKat / friedtoast


「ネスレという企業名を知らない人はいるかもしれないが、ネスレの製品を目にしたことがない、という人は絶対にいない」
と言えてしまうほど、ネスレは巨大な企業です。

主な製品ラインナップを見てみましょう。

ネスレの主な製品

  • チョコレート:キットカット、クランチ、エアロ
  • コーヒー:ネスカフェ、ネスプレッソ、ゴールドブレンド、スターバックス(家庭用製品)、ブルーボトルコーヒー
  • ペットフード:PURINA、Felix
  • その他:ペリエ、ミロ、ウェルネス

特にコーヒーに着目すると、インスタントの「ネスカフェ」から、高級路線の「ネスプレッソ」、さらには「スターバックス」や「ブルーボトル」まで、ありとあらゆる価格帯とジャンルのコーヒーブランドを傘下に収めている点に驚きます。

現在、全世界の社員は約27万人(2023年時点)、販売国はほぼ全世界。売上高は約16兆円(2023年)という、国家予算レベルの規模を誇ります。

しかし、そんな「コーヒーの帝王」も、元々はコーヒーとは無縁の「練乳(コンデンスミルク)」を作る小さな会社から始まりました。

それでは、最初に大企業「ネスレグループ」の歴史をお話していきます^ ^

ネスレの歴史

034613:Tyne Street Newcastle upon Tyne Dept of Environmental Health c.1935 / newcastlelibraries

略史

  • 1866年:アングロ・スイス煉乳会社設立
  • 1867年:アンリ・ネスレによって乳児用食品を販売する会社が設立
  • 1904年:ネスレがチョコレートの販売を開始
  • 1905年:2つの会社が合併し、ネスレ・アングロ・スイス煉乳会社設立
  • 1914年:第一次世界大戦が勃発し、ネスレ製品への需要高まる
  • 1916年:粉ミルクの販売を開始
  • 1934年:オーストラリアで「ミロ」を発売
  • 1936年:ビタミンサプリメント「Nestrovit」発売
  • 1938年:インスタントコーヒー「ネスカフェ」の発売を開始
  • 1948年:米国のネスレが「ネスティー」「ネスクイック」を発売
  • 1957年:缶詰の「ラビオリ」を発売し、缶詰食品の発売を開始
  • 1960年:複数の企業を買収し、冷凍食品分野に参入
  • 1969年:ミネラルウォーター市場に参入
  • 1985年:ペットフードビジネスへ参入
  • 1986年:「ネスプレッソ」ブランドの開始
  • 1986年:イギリスの菓子会社を買収し、「キットカット」などをネスレ製品に追加
  • 1992年:ペリエグループを買収し、ミネラルウォーター分野を強化
  • 2002年:複数企業を買収し、アイスクリーム分野を強化
  • 2010年:「ネスレカカオプラン」や「ネスカフェプラン」が開始
  • 2014年:ネスレ スキンヘル設立

設立〜1900年代:赤ちゃんの命を救う「発明」から始まった

1913 advertisement for Nestle’s Condensed Milk / 159358942@N07

現在の巨大帝国ネスレの起源は、実は「コーヒー」ではなく「ミルク」、それも「小さな命を救うための発明」にあります。

物語は、2つのライバル企業の誕生から始まります。

「腐らないミルク」の発明(1866年)

一つ目は、チャールズ・ページ兄弟が設立した「アングロ・スイス煉乳会社」

冷蔵庫がなかった当時、新鮮な牛乳はすぐに腐ってしまうのが悩みでした。そこで彼らは、安全で長期保存がきく「練乳(コンデンスミルク)」を生産。これが都市部の家庭で爆発的にヒットします。

「母乳代わりのミルク」の発明(1867年)

もう一つが、創業者アンリ・ネスレが設立した会社です。

当時のヨーロッパでは、母乳を飲めない乳幼児が栄養不足で命を落とすことが社会問題になっていました。薬剤師だったアンリは、そんな赤ちゃんを救うため、世界初の人工乳児用食品(ベビーフード)を開発します。

この製品は、母乳も牛乳も受け付けなかった瀕死の早産児の命を救ったことで一躍有名になり、「奇跡の製品」としてヨーロッパ中に広まりました。

【豆知識】ロゴマークの秘密

ネスレのロゴである「鳥の巣(親鳥が雛に餌を与える図)」は、創業時から使われています。<br> 実は「Nestlé」という名前は、ドイツ語で「小さな鳥の巣」という意味。自社の製品が、親鳥の愛情のように「安全で栄養があるもの」であることを象徴しているのです。

かつてのライバルが一つに

その後、練乳市場で激しく競い合っていたこの2社ですが、1905年に歴史的な合併を果たし「ネスレ・アングロ・スイス煉乳会社」が誕生します。

この合併により、生産技術と販売網の双方が強化され、ネスレは世界的な食品メーカーへの第一歩を踏み出しました。

鉄道網の発達という時代の追い風もあり、彼らの製品は国境を越え、世界中の食卓へと届くようになっていったのです。

1900年代〜1980年代:戦争と「ネスカフェ」革命

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20世紀に入ると、世界は大戦の時代へ突入します。
しかし、ネスレにとってこの激動の時代は、皮肉にも「世界帝国」への階段を駆け上がるきっかけとなりました。

軍需品としてのミルク(第一次世界大戦)

1914年に第一次世界大戦が始まると、戦場では「腐らず、持ち運びやすい食料」が求められました。

そこで白羽の矢が立ったのが、ネスレの練乳や粉ミルクです。英国陸軍との大規模契約により、ネスレ製品は兵士たちの命をつなぐ非常食として、戦地へ大量に送られました。

コーヒー革命「ネスカフェ」の誕生(1938年)

そして1938年、コーヒーの歴史を変える大発明が起こります。インスタントコーヒー「ネスカフェ」の誕生です。

きっかけは、コーヒー大国ブラジルからの悲痛な依頼でした。
「大豊作で余ってしまった大量のコーヒー豆を、廃棄せずに保存する方法はないか?」

ネスレの研究チームは数年の苦闘の末、コーヒーの香りを損なわずに粉末化する技術(ソリュブルコーヒー)を開発。これが世界初の「お湯を注ぐだけで飲める美味しいコーヒー」ネスカフェとなりました。

その後、第二次世界大戦が始まると、ネスカフェは米軍の携帯食料(レーション)に採用されます。
戦場で手軽に温かいコーヒーが飲めることは兵士たちの癒やしとなり、戦後、帰還した兵士たちがその味を広めたことで、ネスカフェは瞬く間に世界的な飲み物となったのです。

「暴食」による巨大化

戦後、高度経済成長期に入ると、ネスレは「食卓のすべて」を支配にかかります。

  • 1947年:調味料の「マギー」を買収
  • 1960年代:冷凍食品市場へ参入
  • 1974年:化粧品大手「ロレアル」に出資(食品以外への初進出)

この時期のM&A(合併・買収)攻勢により、ネスレは単なる乳製品メーカーから、人々の生活全般に関わる巨大コングロマリットへと変貌を遂げました。

しかし、急速な拡大の裏で、企業の倫理観を問われる大きな事件も発生します。

それが、現在も語り継がれる「ネスレ・ボイコット」です

1980年代〜現在:コーヒービジネスの「再発明」と帝国の完成

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1980年代以降、ネスレの拡大戦略はさらに加速します。

「キットカット」(1988年買収)や「ペリエ」(1992年買収)など、強力なブランドを次々と手中に収め、食品業界の「暴食者」として君臨します。

注目すべきは、この時期に行われた「コーヒーの飲み方の再発明」と「プレミアム市場への進撃」です。

革命的発明「ネスプレッソ」(1986年〜)

インスタントコーヒーの王者が次に仕掛けたのは、「カプセル式コーヒー」でした。

専用のマシンにカプセルを入れるだけで、バリスタが淹れたようなエスプレッソが飲める「ネスプレッソ」。これは単なる新製品ではありません。

一度マシンを買えば、顧客はずっとカプセルを買い続けてくれるという、いわゆる「サブスクリプション型(消耗品ビジネス)」の先駆けであり、ネスレに莫大な利益をもたらすドル箱事業へと成長しました。

ブルーボトルとスタバを取り込む(2017年〜)

さらに2010年代後半、ネスレは驚くべき手を打ちます。

  • ブルーボトルコーヒーの買収(2017年):サードウェーブ(手淹れ・高品質)の象徴を買収。
  • スターバックスとの提携(2018年):約7800億円を支払い、世界中のスーパーなどでスタバ製品を販売する権利を獲得。

これにより、ネスレは「安価なインスタント(ネスカフェ)」から「家庭用高級機(ネスプレッソ)」、さらには「カフェブランド(スタバ・ブルーボトル)」まで、コーヒーの全方位を支配する「完全なる帝国」を築き上げたのです。

ネスレ・ボイコット:巨大企業の「影」と教訓

Boycott Nestles Microwave What is this shit / 21022123@N04

ネスレを語る上で避けて通れないのが、企業の「影」の部分である「ネスレ・ボイコット」です。

これは1970年代から世界規模で起きた、ネスレ製品(特に粉ミルク)への不買運動のことです。

なぜ不買運動が起きたのか?

発端は、発展途上国での粉ミルクの販売戦略でした。

当時、ネスレを含む多くの企業が、「母乳よりも近代的な人工ミルクの方が優れている」かのような宣伝を行い、販売を拡大しました。

しかし、衛生環境が整っていない地域では、これが悲劇を生みました

生み出された悲劇

  • 母乳の停止:人工ミルクの過剰使用で、母親の母乳分泌へ悪影響を及ぼす。
  • 過度な希釈:高価なミルクを長持ちさせるため、親が薄めて飲ませたことによる栄養失調。
  • 不潔な水の使用:汚染された水でミルクを溶かしたことによる、乳幼児の下痢や感染症の多発。

商品を売るために、赤ちゃんの命を危険に晒している
この告発は世界中を駆け巡り、大規模な不買運動へと発展しました。

「過去の話」ではない

この運動は、1984年にネスレがWHO(世界保健機関)の基準を受け入れたことで一度は収束したかに見えました。

しかし、1988年には「約束が守られていない」として第2回の不買運動が勃発。

実は現在でも、アフリカなどの一部地域で同様の問題が指摘されており、ボイコット運動は完全には収束していません。

反省から生まれた「CSV」という哲学

とはいえ、ネスレがただ手をこまねいているわけではありません。

この手痛い教訓から「社会的な問題を解決しなければ、企業も存続できない」と痛感し、現在では「共通価値の創造(Creating Shared Value)」という理念を掲げています。

例えばコーヒー分野では、「ネスカフェ・プラン」を通じて、立場の弱いコーヒー農家に苗木を配ったり、技術指導を行ったりして、農家の貧困解決に本気で取り組んでいます。

現在進行系の課題を抱えつつも、それを解決しようと巨体を動かしている。
「真っ黒な会社」でも「真っ白な正義の味方」でもない、そんな巨大企業のリアルな姿がそこにはあります。

※このネスレボイコットは「汚れたミルク/あるセールスマンの告発」という映画にもなっています。

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ネスレとコーヒー:世界シェアNo.1の「絶対王者」

Nescafe / jelltecks


さて、ここからが本日の本題です。

巨大食品企業ネスレにとって、コーヒー事業は現在も売上の約25%(※)を占める最大の柱です。
※2023年決算資料より推計

実は、「世界中で飲まれるコーヒーの5杯に1杯はネスレ製品」と言われるほど、そのシェアは圧倒的。

では、なぜ彼らはここまで強いのでしょうか?

日本独自のイノベーション「ネスカフェ アンバサダー」

特に日本のネスレ(ネスレ日本)は、世界でも注目されるユニークな戦略で知られています。

その代表例が、2012年に開始した「ネスカフェ アンバサダー」です。 これは、オフィスにコーヒーマシンを無料で貸し出し、専用のコーヒーパックを購入してもらうサービス。

一見普通のサービスに見えますが、このサービスの凄いところは「職場の誰か(アンバサダー)」を巻き込み、「コーヒーを通じたコミュニケーション」そのものを商品にした点です。
この日本発のモデルは、成熟したコーヒー市場でもまだ成長できることを証明し、世界のネスレからも称賛されました。

ネスカフェは第二次世界大戦時、アメリカ軍が参戦した際に重宝されたほど歴史ある製品たちです。

全方位をカバーする「鉄壁の布陣」

ネスレの強さは、そのブランドポートフォリオ(組み合わせ)の完璧さにあります。

スーパーの棚から高級デパートまで、あらゆる客層をカバーしている、製品群を見ていきましょう。

王道にして原点「ネスカフェ ゴールドブレンド」

日本のインスタントコーヒーの代名詞です。
実は「インスタント」ではなく「レギュラーソリュブルコーヒー」と呼び、微粉砕した焙煎豆を包み込むことで、淹れたての香りを実現しています。

おうちカフェの決定版「ネスカフェ ドルチェグスト」

カプセル式コーヒーのカジュアルライン。この製品の凄いところは、コーヒーだけでなく「抹茶ラテ」や「チョコチーノ」、さらには「スターバックスのカプセル」まで楽しめること!家族みんなで楽しめる、まさに「おうちカフェ」のマストアイテムです。

極上のエスプレッソ体験「ネスプレッソ」

コーヒー好きなら一度は憧れる、プレミアムなカプセルマシン。最大19気圧という業務用並みの圧力で抽出するため、濃厚なクレマ(泡)が立ちます。「自宅でホテルのようなエスプレッソを飲みたい」という方におすすめです。

家で楽しむスタバ「スターバックス オリガミ」

スーパーやギフトでよく見かけるこの「オリガミ」。実はこれも、ネスレがスターバックスと提携して販売している製品です。お店と同じ豆を使い、日本の折り紙から着想を得たドリッパーで丁寧に淹れる一杯。ギフトとしても鉄板ですね。

まとめ:巨大帝国ネスレを知れば、コーヒー選びがもっとおもしろくなる

Nestle Pure Water / aheram

今回は、世界最大の食品企業にして、コーヒー業界の絶対王者「ネスレ」について解説してきましたが、いかがでしょうか?

今回の内容のまとめ

  • 圧倒的な世界No.1:世界のコーヒーの5杯に1杯はネスレ製品。
  • 全方位を支配:庶民派の「ネスカフェ」から、高級路線の「ネスプレッソ」、カフェブランドの「スタバ」「ブルーボトル」まで全てを網羅。
  • 光と影の歴史:ボイコット運動という過去を背負いつつ、現在はCSV(共通価値の創造)で社会課題解決に取り組んでいる。

ネスレは単なる「大きな会社」ではありません。

戦争で広まったインスタント技術から、現代のサステナブルな農園支援まで、時代の変化に合わせてコーヒーの形を進化させ続けてきたイノベーターでもあります。

スーパーやコンビニでコーヒーを買う時、パッケージの裏側を見てみてください。きっとそこには、あの「鳥の巣マーク」があるはずです。

「あ、これもネスレだったんだ」そんな気づきが、あなたの毎日のコーヒータイムを少しだけおもしろくしてくれるかもしれません^ ^

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