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ディカフェのコーヒーってどうやって作るの?|スイスウォータープロセスについてわかりやすく解説

皆さん、こんにちは!
そしてサイトへのご訪問ありがとうございます^ ^

皆さんは、ディカフェ(カフェインレス)のコーヒーを飲んだことはありますか?

一時期話題になったこのディカフェコーヒーは、90%以上のカフェインを除去したコーヒーのことで、技術の進歩により、コーヒーの味をほぼ損なうことなくカフェインを除去しています。

今回の記事では、そんなディカフェの製法の一つ「スイスウォータープロセス」をご紹介していきます。

ちょっとマニアックな内容ですが、カフェインレスコーヒーの作り方をなるべくわかりやすくお話していきますので、最後までお付き合いいただければと思います^ ^

少しおさらい


最初に、前回の記事でご紹介したディカフェの製法の一つ「有機溶媒抽出法」について、簡単にお話ししようと思います。

有機溶媒抽出法には、

  • 直接法
  • 間接法

の2種類があります。

直接法は、「カフェインが溶ける有機溶媒(薬品)にコーヒー豆を浸けてカフェインを溶かす」方法ですが、「残留した有機溶媒(ベンゼンなど)の毒性に不安がある」という欠点がありました。

皆さんも、有毒な薬品の成分が残っている可能性のあるコーヒーなんて飲みたくないですよねw

実際は、ベンゼンなどの有機溶媒は、コーヒー豆を乾燥させるときにほぼすべて蒸発してしまうそうですが、現在日本ではこの直接法は禁止されています。

そこで、開発されたのが間接法です。
これは、

  1. コーヒー豆を熱湯につけカフェインを含む可溶性の成分を全てお湯に溶かす
  2. そのコーヒーの成分が溶けているお湯に、有機溶媒を入れてカフェインと有機溶媒をくっつける
  3. 最後にお湯を加熱して、有機溶媒とそれにくっついたカフェインを蒸発させる

という方法です。少しややこしいですねw

コーヒー豆に直接薬品を付けないため「間接法」と呼ばれるこの方法は、「一部の香り成分がコーヒー豆に戻らず、コーヒーの香りが損なわれてしまうという」という欠点がありました。

そして開発されたのが、今回ご紹介する「スイスウォータープロセス」です^ ^

スイスウォータープロセス


スイスウォータープロセスは1941年に開発され、1980年代に商業化された方法です。

「The Swiss Water®︎ Process」という名前で特許も取られています。

スイスウォータープロセスの手順は、間接法よりややこしいのですが、

  1. コーヒー豆1を熱湯につけ、カフェインを含む全ての可溶性成分を、お湯に溶かす
  2. 手順1のお湯をカーボンフィルターに通して、カフェインのみを取り除く
  3. 手順2でできたカフェインのみが除去されたお湯に、コーヒー豆2をつける(手順1の豆とは別の豆)
  4. 手順3のお湯を再度カーボンフィルターに通し、カフェインのみを取り除く
  5. 手順3の豆を再度手順4のお湯に浸ける
  6. これをコーヒー豆2のカフェインがほぼなくなるまで繰り返す

という手順になります。

正直、ややこしくてわかりにくいと思うので、それぞれの手順についてできるだけわかりやすく説明していきます^ ^

コーヒー豆1を熱湯につけ、カフェインを含む全ての可溶性成分を、お湯に溶かす

この手順は間接法と一緒で、コーヒー豆に含まれるお湯に溶ける成分(カフェイン含む)を、すべてお湯に溶かします。

これで、お湯に溶けるコーヒー豆の成分(カフェイン含む)入り、のお湯ができあがります。

手順1の溶液をカーボンフィルターに通して、カフェインのみを取り除く


カーボンフィルターはその名の通り、炭素で作られたフィルターです。

詳しい説明は省きますが、要は、カフェインだけ除去できるフィルターだと思っていただければ^ ^

この手順で、手順1で作ったお湯が、お湯に溶けるコーヒー豆の成分(カフェイン以外)入り、のお湯になります。

この辺から少しややこしくなってきましたねw

手順2でできたカフェインのみが除去された溶液に、コーヒー豆2をつける(手順1の豆とは別の豆)

コーヒー豆2を、手順2で作ったお湯につけることで、コーヒー豆2からお湯に溶ける成分(カフェイン含む)が、お湯に溶けだそうとします。

しかし、手順2で作ったお湯は、お湯に溶けるコーヒー豆の成分(カフェイン以外)、がたっぷりと溶けている!

そこで、コーヒー豆2のカフェイン以外の成分はお湯に溶けることができず、結果、コーヒー豆2からはカフェインだけがお湯に溶けます

そう、この手順でコーヒー豆2は、カフェインをある程度除去したコーヒー豆、になるのです^ ^

この手順で、手順2で作ったお湯は、お湯に溶けるコーヒー豆の成分(カフェイン入り)になってしまうので、またカーボンフィルターを使ってカフェインだけを除去!

そしてこのお湯を使ってまたコーヒー豆2から、除去しきれなかったカフェインを取り除く!

といったことを繰り返し、ディカフェの基準である90%以上のカフェインを除去したコーヒーを作り出します。

手順を見ていただいた通り、有機溶媒などの薬品は一切出てこず、水(お湯)のみを使ってカフェインを除去するこの方法は、「ウォータープロセス」という名称がつきました!

まとめ


今回の記事では、ディカフェの製法の一つ、スイスウォータープロセスについてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?

手順は正直ややこしかったと思うのですが、重要なのは、スイスウォータープロセスは
お湯(とカーボンフィルター)だけでカフェインを除去できる方法
ということです。

安全性を保ちつつ、カフェインを除去できるこの方法は、とてもすごい発明ですね^ ^

さて、現在はスイスウォータープロセスよりカフェインの除去率が高く、かつ安全な方法「超臨界二酸化炭素抽出法」を使用することが増えてきました。

次回の記事ではこの超臨界二酸化炭素抽出法についてご紹介していきます^ ^

※有機溶媒抽出法についてはこちら