コーヒー豆の加工法を徹底解説!味わいを変える4つの方法とその秘密
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コーヒー豆の個性的な味わいは、栽培方法だけでなく「加工方法」によっても大きく変わることをご存知ですか?
実は、収穫されたコーヒーチェリーがあの馴染みのある茶色の豆になるまでには、「乾燥式(ナチュラル)」「水洗式(ウォッシュド)」「半水洗式(セミウォッシュド)」「折衷式(ハイブリッド)」という4つの異なる加工方法があります。
これらの『加工』の工程は、コーヒーの風味、酸味、甘み、そしてボディ感に独自の特徴を与えます。
今回は、それぞれの加工方法の工程の違いと、生み出す味わいの秘密について、わかりやすく解説していきますので、ぜひ最後までお付き合いください^ ^
コーヒーの実から、よく知るコーヒー豆になるまで
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普段私たちが目にする茶色いコーヒー豆。実は、このコーヒー豆はコーヒーの木になる、真っ赤な果実『コーヒーチェリー』の中に眠っている、コーヒーの種子からつくられています。
※コーヒーチェリーの写真
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このコーヒーチェリーの中には、私たちがよく知るコーヒー豆が2つ仲良く並んで入っていますが、このままでは美味しいコーヒーを淹れることはできません。果肉や粘液質な部分を丁寧に取り除き、適切な方法で乾燥させる必要があるのです。
この大切な工程、つまりコーヒーチェリーからコーヒー豆を取り出して加工する方法のことを「加工法」や「精製法」と呼びます。
それでは、具体的な加工方法をご紹介する前に、コーヒーチェリーがどのような構造になっているのか、一緒に見ていきましょう。実は、この構造を知ることで、なぜ加工方法によって味わいが変わるのか、その理由が見えてきます。
コーヒーチェリーの構造〜身近なさくらんぼに似ている?
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コーヒーチェリーの構造を理解するために、身近な果物「さくらんぼ」と比べてみましょう。実は、この2つには驚くほどの共通点があります。
まずは、さくらんぼを思い浮かべてみてください。外側の皮、甘い果肉、そして中心にある種子―。コーヒーチェリーも、まさにこの構造そのものなんです。
コーヒーチェリーを外側から順番に見ていくと:
- 果皮・果肉:さくらんぼでいう赤い皮と実の部分
- 粘液質(ミューシレージ):種子を包む透明なゼリー状の層
- パーチメント(内果皮):薄い殻のような保護層
- シルバースキン(銀皮):豆を直接包む薄い膜
- 生豆:私たちがコーヒー豆として知る部分
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このように、コーヒー豆は、何層もの果肉や皮に守られていて、加工方法とは、つまり、この大切な豆を取り出すために、外側の層をどのように取り除いていくかという工程を指します。
では、具体的にどのような加工方法があるのか、見ていきましょう。
コーヒーチェリーの4つの加工方法
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コーヒーの加工法には、大きく分けて以下4つあります。
- ナチュラル(乾燥式)
- ウォッシュド(水洗式)
- 半水洗式(ギリン・バサ)
- ハニープロセス
それぞれの加工方法の特徴を、順番に見ていきます。
ナチュラル(乾燥式)加工法〜最も伝統的な製法が生み出す芳醇な味わい
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ナチュラル(乾燥式)加工法は、コーヒーチェリーをそのまま天日乾燥させるシンプルな方法です。
乾燥式加工法の工程
- 収穫したコーヒーチェリーを選別
- 果実をそのまま乾燥用の台に広げる
- 2-4週間かけてゆっくりと天日乾燥
- 定期的に果実をかき混ぜ、均一に乾燥させる
- 乾燥後、果肉を機械で除去して生豆を取り出す
味わいの特徴
乾燥式で加工したコーヒー豆には、以下のような特徴があります。
- 豊かな甘みと濃厚なボディ
- フルーティで華やかな香り
- まろやかな口当たり
- ワインのような複雑な風味
乾燥式のメリット・デメリット
このナチュラル製法で作られたコーヒーは、果実由来の甘みと豊かな風味が特徴で、スペシャルティコーヒーファンの間でも人気が高まっています。特に、フルーティな風味を楽しみたい方や、酸味の少ないまろやかなコーヒーがお好みの方におすすめです。
ウォッシュド(水洗式)加工法〜クリアな味わいを引き出す現代的な製法
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現在、世界中の高品質コーヒー生産地で最も一般的に採用されているのが、このウォッシュド(水洗式)加工法です。特に中南米やケニアなどの産地では、品質の安定性と特徴的な味わいから、主力の製法として定着しています。
ウォッシュド(水洗式)の工程
- 収穫したコーヒーチェリーを選別
- パルパーと呼ばれる機械で果肉を除去
- 水槽で12-36時間の発酵処理
- きれいな水で豆を洗浄
- 天日または機械で乾燥
- パーチメントを除去して生豆を取り出す
味わいの特徴
水洗式で加工したコーヒー豆には、以下の特徴があります。
- すっきりとした酸味
- クリーンで透明感のある味わい
- 繊細な香り
- ライトからミディアムボディ
- コーヒー本来の風味が際立つ
メリット・デメリット
ウォッシュド製法のコーヒーは、その透明感のある味わいから、豆本来の個性や産地の特徴がはっきりと感じられます。浅煎りで淹れることで、爽やかな酸味とすっきりとした後味を楽しむことができます。
半水洗式(ギリン・バサ)加工法〜インドネシア伝統の独特な製
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インドネシアのスマトラ島で発展した「ギリン・バサ」として知られる半水洗式は、ナチュラルとウォッシュドの特徴を併せ持つユニークな加工方法です。「ギリン・バサ」はインドネシア語で「ウェット・ハル」(湿った状態で果肉除去)という意味を持ちます。
半水洗式の工程
- 収穫したコーヒーチェリーを選別
- 果実を一晩程度寝かせる
- 半乾燥状態(水分40%程度)で果肉除去
- その後すぐにパーチメント付きの状態で乾燥
- 最終工程で残った果肉を除去
味わいの特徴
半水洗式で加工したコーヒー豆は、以下の特徴を持ちます。
- 力強いボディ感
- マイルドな酸味
- スパイシーな風味
- アーシー(土っぽい)な味わい
- 独特のハーブ感
メリット・デメリット
このギリン・バサ製法は、インドネシアのコーヒーに独特の個性を与える重要な要素となっています。特にスマトラコーヒーの代名詞とも言えるスパイシーでハーブのような風味は、この製法によって生み出されています。
近年は品質管理の向上により、より安定した品質のコーヒーが生産されるようになってきました。独特の風味を求めるコーヒーファンの間で、その人気は着実に高まっています。
折衷式(ハニープロセス)加工法〜果肉の甘みを活かした革新的な製法
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近年、特に中米を中心に注目を集めているハニープロセス。果肉の残し方によって味わいをコントロールできる革新的な加工方法として、スペシャルティコーヒー業界で高い評価を得ています。
ハニープロセスの工程
- 収穫したコーヒーチェリーを選別
- パルパーで果肉を部分的に除去
(この時、意図的に果肉を残す量を調整) - 残した果肉付きのまま、レイズドベッド(天日乾燥台)に広げる
(この時点で、ブラック/レッド/イエローの種類が決定) - 定期的に攪拌しながら、ゆっくりと乾燥
(種類により8-20日かけて乾燥) - 最終工程でパーチメントを取り除き、生豆に仕上げる
製法の特徴
ハニープロセスは『パルプドナチュラル』とも呼ばれ、果肉の残し方で3つの主要なタイプがあります:
種類 | 果肉の残し方 | 乾燥期間 | 味わいの特徴 |
---|---|---|---|
ブラックハニー | 果肉を最も多く残す (粘液質もほぼ全て残す) | 15-20日 | ・最も濃厚な甘み ・重厚なボディ ・複雑な風味 |
レッドハニー | 果肉を中程度残す (粘液質を50%程度残す) | 10-15日 | ・バランスの良い甘み ・程よい酸味 ・まろやかな風味 |
イエローハニー | 果肉を最小限に残す (粘液質をわずかに残す) | 8-10日 | ・控えめな甘み ・爽やかな酸味 ・すっきりとした味わい |
味わいの特徴
ハニープロセスで加工したコーヒー豆は、以下の特徴を持ちます。
- 豊かな甘み
- シロップのような滑らかさ
- フルーティな香り
- バランスの取れた酸味
- なめらかなボディ感
メリット・デメリット
ハニープロセスは、ナチュラル製法の豊かな甘みとウォッシュド製法のクリアな味わいを両立させた、まさに”いいとこ取り”の製法です。コーヒーの新しい可能性を感じさせる加工方法として、これからも注目を集めていくでしょう。
まとめ:それぞれの加工法が生み出す個性豊かな味わい
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今回の記事では、コーヒー豆の加工法についてご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?
- ナチュラル製法:最も伝統的な製法で、豊かな甘みと濃厚な味わいが特徴
- ウォッシュド製法:クリーンで明確な酸味、産地の個性が際立つ現代的な製法
- ギリン・バサ製法:インドネシアの伝統が生んだ、スパイシーな個性派
- ハニープロセス:果肉の残し方で味わいをコントロールできる革新的な製法
近年では、これらの加工法を選ぶ際に、単においしさだけでなく、その土地の気候や水資源、環境への配慮なども重要な要素となっています。また、生産者たちは従来の手法に改良を加えたり、新しい製法を試みたりしながら、さらなる品質向上を目指しています。
コーヒーを選ぶ際は、産地や焙煎度と共に、この「加工法」にも注目してみてください。きっと、普段のコーヒータイムがより深く、より楽しいものになると思いますよ^ ^
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